2020. 3. 7
どうも、TMです。
今回から日誌を掲載していくんですが、その前にお見せしたいものがあるんです。
えっと…どこにやったかな……(ガサゴソ…)
…あ、ありました。
( この画像の公開期間は終了しました )
これは僕です。
皆さんとやり取りをしていると、どうも僕に対するイメージがうまくつかめてないのかなぁ…という印象がありますので、貼ってみることにしました。
今後、何かのお役に立てれば幸いです。
それではどうぞ。
ー ー ー ー
キーン コーン カーン コーン
コーン カーン キーン コーン
午前中の自習時間の終わりを告げるための、チャイムが鳴る。
これから昼休みの時間だ。
僕はこれから、合格発表を見るために、駅のいつものあの場所に向かう。
「おいっ! ○○、 △△大の医学科受かったってよ!!」
「マジか! スゲェ~!!」
友人や知り合いの合格で、賑わい始める教室。
ここ最近は休み時間になるたびに、そうしたニュースで騒がしくなる。
もちろん赤の他人であっても、その合格の知らせは嬉しく思うものではあるが、耳栓をしたくなるような気持ちになるときもあった。
賑わい騒ぐ声が、不快に思うことがあった。
去年はしなかった自己採点を、今年は何回もやった。「英作文は○点ぐらいで…、」「近代史は最低でも△点…。」という具合に。
けれども結局、国語の現代文の採点がしようがなく、徒労に終わる。
無駄だと分かっていても、止められなかった。取らぬ狸の皮算用っていうのかな。
でも、そんなことも今日で最後だ。
荷物をまとめ、席を立つ。
はしゃぐ人だかりを横目に、僕は教室を出る。
ー ー ー ー
実は合格発表は、今日の午前9時から既に始まっている。
なぜ正午を過ぎた今、見ることにしたのか。
一つは、アクセス集中を避けるため。
もう一つは、自分を後に引けないようにするためだ。
メールでの様子から、おそらく母は待ちきれず、9時ちょうどに見に行くはずだろう。
それならば。
母親に先に見てもらうことで、この現実と自分を、強制的に対峙させる。
もう、後には引けない。
ー ついに時は来たのだ。
ー ー ー ー
駅のいつもの場所に着く。
フリーWi-Fiがあって、人通りも少なくて静かな、僕のお気に入りの場所。
Chromeを立ち上げ、目的のページを開く。
今までは「発表は3月7日午前9時予定です」とだけ書かれていたページが、今日は開く。
学部を選ぶページが、示される。
…このさきに、
あるのか、
ないのか。
分からない。
開く。番号が並んでいる。
下にスクロールしていったそのさきに、
あるのか、
ないのか。
分からない。
怖い。
見るのが。
とてつもなく、怖い。
でも、これは避けられない道だ。
そうだ。もう後には引けない。
もし、望んでいない結果だったとしても。
見なければ、何も始まらないのだ。
深呼吸する。
大きく、息を吸う。
ー 決めた。
画面を指でなぞり始める。
下に、スクロールしていく。
「110番代…………」
「120番代…………」
ー あぁ、もうすぐ。
とある映画のラスト。階段で2人の男女がすれ違ったときのような気持ちに、僕はなる。
ー どうか、どうかッ…………!
とある映画の主人公が強く願ったように、僕も強く願う。
そしてその瞬間は、突然訪れる。
番号が、あった。
「え…?」
受験票の番号と、照らし合わせてみる。
ある。
一度ページを閉じる。
もう一度開いて、見てみる。
そこに、ちゃんと、ある。
「うそ………」
思わず驚きの声を出し、そしてどこからか、温かい感情が湧いてくる。
「 ー そうなんだ。」
「オレ、大学生になるんだ。」
そう思うので、精一杯だった。
ー ー ー ー
しばらく余韻に浸った後で、ふと思いだす。
「そうだ、親に電話しなきゃ。」
ここだと人の声が少しうるさい。
それに今はなんだか、座って落ち着いて電話したい気分なのだ。
「どっかいいとこあったかな…」
少し逡巡したのち、思いつく。
駅近くにある、小さな公園。
あそこなら、静かで座れるところもあるだろう。
ー ー ー ー
駅を出ると、小雨が降っていた。
ー マジか。傘持ってきてねぇ…。
まぁいい。雨に濡れるのも、雨の楽しみ方の一つだ。
駅の広い構外を、人目に付かない程度の小走りで駆けていく。
なんだか今は、とても走りたい気分だ。
ー そうだよ。この走りは、一生でこの一回限りの走りだよ。
そう思うと、自然と次第に足が速まるのだった。
ー ー ー ー
「ここだ。」
公園に着く。
雨が降っているためか、人はいない。
雨宿りができる、倉庫らしき建物の軒下に座る。
まだ息が整っていないにも拘わらず、キッズケータイの発信ボタンを押す。
プルルル、プルルル…。
短い発信音の後に、母が出る。
「合格おめでとうー!」
その出だしに、思わず笑みがこぼれる。
息が途切れているため黙っていると、
「あれ?どしたの?」
と問う母。
「いや…、少し走ってきたから、息がまだ整ってなくて…。」
と僕は応える。
そして余韻たっぷりに、僕は言う。
「番号、あったね。」
ー ー ー ー
母はたまたま今朝8時59分に起きたらしく、「心臓がバクバク」して、そのまま結果を見たという。
「で、見たときどうやった?」
と僕が問うと、
「ごっ、号泣しましたよッ!///」
とのご返答が。
こっ…これは照れてる。
可愛らしいなぁ。
そんな話しをしていると、目の前に七、八匹ほどのハトがやって来た。
「おっ!?」
その中に、珍しいことに白いハトもいる。
ハトも僕の合格を祝ってくれているのだろうか。
そう思うと、とても微笑ましい気持ちになった。
ー ー ー ー
その電話は、1時間は軽く過ぎたと思う。主に新天地での住まいについて話した。
1時半はもう過ぎており、さすがに昼メシが食べたい。
ちょっと高級なレストランに寄ろうかと思ったけれど、昼の営業は2時までとあり、これは行けなさそうだ。
仕方なしに、近くのガストに行くことにする。
ー ー ー ー
ミックスグリルに、加えてミニパフェを注文する。
ちょっと高級なレストランには行けなかったから、これはその代わりのご褒美だ。
待っている間は、テーブルにノートを広げて、ペンを走らせる。
書いているのは、感謝の気持ち。
寮長さん、一年間通わせていただいた飲食店の大将さん、講師のN先生…。 この一年間、多くの方々に大変お世話になった。
合格したての今の気持ちを、言葉に表したかった。
料理を運んできた店員は、やはり少しばかり物珍しそうな目をしていた。
そりゃそうか。普通、待っている間はスマホかパソコン。
ノートを広げている客は稀だろう。
ー ー ー ー
駅校に帰ると、担任のSチューターを捜した。
面談室を覗いてみると、どうやら今年の結果が芳しくなかったらしい新規申込者(後輩)と面談しているようだ。
そう。もう春期講習会の準備が始まっているのだ。
本当に、丸一年が経とうとしているのだ。
面談を終えて、Sチューターが面談室から出てくる。
そして僕の姿を認め、近寄ってくる。
「もう結果…見たよね?」とでも言いたげな表情。
その無言の問いかけに、僕は「はい!」と応える。
「合格…おめでとう!」
「はい…! こちらこそありがとうございます!」
「いや~、受かってて良かったなぁ!」
「はい!もうホントに!はい!」
「 TMがうちのクラス旧帝第一号だからなぁ。」
「そうなんですか!?」
自分の受け持ちクラスの旧帝第一号…。そりゃ嬉しいだろうなぁ…。
「そうだ、さっそく合格体験記書いてよ。俺、TMが書いたの読みたいわ。」
「いえいえ、僕のなんて…。あ、そうだ聞きましたよ! 明日 九大 ( 九州大のこと。旧帝大の一つ。) の発表なんでしょう? だったらそっちの方が100倍大事じゃないですかぁ~!」
そんな会話をしつつ、合格体験記を書くためにエレベーターに乗り、個別ブース室に向かう。
ー ー ー ー
合格体験記は、書けなかった。
主要科目である英語と数学が苦手で、センターもうまくいかず、なおかつ「文転」というやや特殊な受験生である僕が、後輩に向けて書けることはあまりなかった。
それよりも、様々な方への感謝の手紙…。お礼状が猛烈に書きたかった。
なぜなら、明日…。ここ小倉を去るのだから。
Sチューターには詫びを入れ、僕は駅校を後にした。
ー ー ー ー
「そうだ…。寮長さんに合格を報告しなきゃ。」
「寮長さんに、早く報告したい。」
一年間通い慣れた通学路の、「最後」の下校。
それを味わいたい気持ちと、報告を急ぐ気持ちとがせめぎ合い。
僕は帰路に着くのであった。
(後半に続く)
ー ー ー ー
もし、僕が「自分史」という歴史書を作るのならば。
今日この日を、第二章の最後とするだろう。
ー ー ー ー
・お知らせ
LAMUさんが気付かれていない可能性も考慮して、お知らせ致します。
5/18(月)、5/19(火)、5/22(金)、朝ドラの『エール』に、野田洋次郎さんが出演される予定だそうです!
これを機会に見てみるのもいいかもしれませんね。
それではまた次回。