TMの個人ブログ

某文系Q帝大生の個人ブログ。新海作品やその他 諸々について記事を書いています。LAMUさんというお方の新海作品ブログにもお邪魔させて頂いております。

「選択する」とはどういうことか? ~帆高の下した決断~

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( 2020.5.15、現在更新中 )


皆さま、お久しぶりです!😃

今回は、現在大ヒット上映中の最新作『天気の子』☀️☔️ の真髄に迫っていきたいと思います! (以下ネタバレを多分に含みますので、まだ未鑑賞の方は、ブラウザバックを推奨いたします)。

映画『天気の子』では、主人公の帆高が劇中終盤、とある「選択」をすることになります。

この記事を読んでいらっしゃる読者の皆さんも、これまで多くの「選択」をしてきた結果、今に至っていらっしゃるでしょう。そこで皆さんに質問します。「選択する」とは、いったいどういうことなのでしょう?  何かを選択するという行為の「背景」を、皆さんは考えたことがあるでしょうか? (「選択すること」=「選ぶこと」と思った方。それは単なる言い換えですよ…💦 )

今回は、「選択する」とはどういうことなのかを、論理的に考えていこうと思います。

題材は、大澤真幸氏による文章です。

すぐにでも本文を読み始めたいのはやまやまではありますが、その前に本文中に登場する語句を解説しておきますね。

・本文中の漢字

(ア) フンソウ…紛争
(イ) イキョ…依拠
(ウ) グゲン…具現
(エ) キハク…希薄
(オ) カンゲン…還元
「還元」は「本質に肉迫」! 重要語句!

・本文中の語注

(1)  小木郁夫…対談当時は民主党参議院議員秘書 (1980~)
(2)  姜 尚中…在日韓国人二世の政治学者 (1950~)
(3)  パルタイ…「パルタイ(Partei)」とはドイツ語で「党」を意味している。ここでは『政党』の意味。
(4)  ヘーゲル…ドイツの有名な哲学者 (1770~1831)

・本文中の記号

丸印○は、本文中のキーワードを意味します。

2つの三角形が対になっている砂時計⌛のような形の記号は、「逆の文」を表しており、逆接・対比・否定・条件・逆説などを意味します。

逆三角形▽の記号は、「まとめの文」を表しており、まとめの接続語・指示語を意味します。

長方形 □ の記号は、「強めの文」を表しており、主張・強調・背景・本質・定義表現を意味します。

三角形 △ の記号は、「列挙表現」を表しており、数詞・添加を意味します。

括弧( ) の記号は、「具体説明」を表しており、例・比喩を意味します。解答の重要ポイントが含まれていることはめったにないので、サラッと読み流すことがほとんどです。

・本文

お待たせしました。ようやく本文です(端末のカメラの性能が悪く、少し読みづらいです…💧。申し訳ありません)。それではどうぞ💁


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第1段落では、比例代表制小選挙区制を話題として、本文の導入を図っていますね。

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第2段落では、比例代表制小選挙区制の相違点について書かれていますね。比例代表制小選挙区制は、皆さん大丈夫ですか? ここで書いてあることは、もはや常識と言えるものですので、きっと難しくはないと思いますけれど。

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第3段落で一番注目すべきなのは、2行目の「だが」以降の文章ですね。一見、より民主的に見える比例代表制。しかし、「より民主的」であることが、「よいこと」だとは限らないと筆者は言うのです。そして、その判断は「どのような前提をおくか」によって、分かれてくるのだそうです。

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第4段落では、ある「前提」を仮定した結果、予算を道路工事と学校拡充のどちらに使うべきか…、つまり「利害の対立」が起こった事例が書かれていますね。(第1の前提)

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第5段落では、また別の「前提」を仮定した結果、自衛隊を派遣すべきか否か…、つまり「価値観の対立」が起こった事例が書かれていますね。(第2の前提)

第6段落の前半は、第4・5段落で示した2つの事例のまとめとなっていますね。話しの発端である第3段落で書かれていたことに立ち返ってみますと。
僕たちは一見、「比例代表制の方が、より民主的だから良さそう」と思ってしまいがちですが、それは実は話しの争点が「利害の対立」であったからだよ、と筆者は言っているのです。
そして、自衛隊派遣のような、白黒つけるべき話しにおいて…つまり「価値観の対立」が争点の場合では、小選挙区制の方が適していることもあるよ、ってことですね。

第6段落後半の方は、AやらBやら記号も出てきて、話しがちょっと難しくなってきてますね。皆さんは大丈夫ですか? 筆者によりますと、「中間をとることは真理ではないものを選ぶ」ことを意味し、「真理は2つの事柄のどちらかにある」そうです。言い換えますと、なにがしかの選択をするとき、僕たちはリスクをおかしてどちらかを選ぶしかないと言うのです。たとえば『天気の子』では、帆高は「東京を水びたしにする」か、「陽菜の命を犠牲にする」かの選択を迫られますよね。そのどちらを選ぶにせよ、それを選び取るという行為には大きな「リスク」が伴うよ、と筆者は言っているのです。

さて、ここまで皆さん大丈夫ですか? 第7段落からは、いよいよ「選択するとはどういうことか」という話しの本題に迫っていきます。難しい話しが続きますので、ここで一息休憩をとりたい方は、ぜひとってくださいね☕️。

それではよろしいでしょうか。では、お話を再開しますね。

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本文の解説・要約

本文の解説になります。

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図が分かりやすくて良いですね。

第7段落の「選択肢が増えたことで、逆にかえって、真に選択すべきものがなくなってしまったかのように見える」現象は、グーグルで「選択のパラドックス」と検索してみると、色々出てきますよ。

本文を読んでも解説を読んでも、サッパリ意味が分からんという方は、ひとまず次の章へお進みください。

・具体例を図式化

文章の内容がほとんど頭に入らなかったという方へ。第9段落のmanについての選択を図式化してみると、以下のようになるのではないでしょうか。

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この図によって、グッと理解度が増したはずです。

ついでに、政党についての選択も図式化してみましょうか。

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こんな感じになりますね。

ところで実は、この図には本文と異なる部分があります。ここまでしっかり理解している方なら、おそらくもう既に気付かれていることでしょう。

本文第9段落の最終行にご注目。

「二つの内のどちらの……同時に(全体=人民)でもありうるかを…」とありますが、これはの誤りなのではないでしょうか。

第8段落3行目以降「類(全体)」という表現が繰り返し用いられてますし、同段落最終行では、「選択は、どちらの種(部分)が、種(部分)でありつつ、類(全体)と同一視できるかを決定しているのだ」と明記されているのですから。

以上のことより、おそらくミスプリ…で間違いないと思います(ですよね?)。

この本文プリントだけでなく、出典元の本もミスプリになっているのか気になるところではありますが…。なにせマイナーな本なので、確認する術がありません💧

以上、ミスプリを発見した件でした。

・『天気の子』の真髄に迫る!

では、ここまで学んだことを、『天気の子』における帆高の選択に応用してみましょうか。

まずは皆さん、お手元に紙と鉛筆を用意してください。

それではここで、皆さんに少し作業をしていただきます。帆高の選択を、前の章で私が示したように、自分なりの考えで図式化してみてください。(描き終わりましたら、下に私が考えた図を載せておりますので、ご自身のものと見比べてください)


私の考えた図は、大澤氏が本文中で述べた図とは少し異なるものになりました。

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私なりに相違点および特徴を挙げてみますと…。

① 種(部分)が、同一のもの(陽菜)の有り無しである。↔ 異なる複数のもの(ex. 政党)
② 種を選択した後の、類(天気)の結果が決まっている
③ ①②のように、大澤氏の図とは異なる点がありながらも、帆高の選択を「真の選択」だと感じる ➡ 人(陽菜)の生死が関わっているから

・考察

正直に申し上げると、帆高が決断したことの意味(選択するとはどういうことか)を深めることは、今回できなかったように思います。

その理由は上記の通り、『天気の子』における選択は、本文中に例として挙げられた選択とは異質のものであるように、私には思えるからです。

しかし、帆高の選択が、本文で例として挙げられていた選択とは異なる特徴を持っているということが、今回はっきりと判ったように私は思います。

そう…「選択」という言葉は1つの単語として存在するけれども、それは様々な種類の選択における集合名詞に過ぎないのではないか、と考えるようになりました。

・追記

上記のことを考察し終えた後、ブリタニカ国際大百科事典の説明を読んでみると、思わぬ発見がありました。

【選択】(choice)
一般には、最も適当なものを選び出すことをいう。選択の問題は、その人間の可能性をも含めて、自由意志との関連でとらえられるが、その場合には自由選択と、ある必然的法則性との対立関係が問題とされる。すでにアリストテレスの『ニコマコス倫理学』でも扱われているが、ここでは、行為の目標が前提とされている場合に行為者に許された手段の選択が問題となっている。近代では特にキリスト教的な摂理の神と人間の自由意志との関係において倫理的な自由選択の可能性が問われ、それに対して、たとえばカントは実践理性に基づく定言的命法に自由意志を認めた。またキルケゴール実存主義的な立場から選択を実存の一つのカテゴリーと考え、ベルグソンも実存のありようを選択に求めたが、彼は限界状況にある実存としての個人が、その全人格、全生命を賭けて行う選択を創造的選択と呼んだ。なお、現代の実存主義においても選択は実存の規定契機として中心的な問題である。

…おそらく、一度読んだだけではワケが分からないと思います。「カント」やら「定言的命法」やら「実存主義」やら…。頭がパンクしそうですよね(笑)。しかし何度も読み返してみると、何を言っているのかがぼんやりと掴めてくるのではないかと思います。

私はですね…。この説明を読んで、やはり「選択には種類がある」ということを、強く確信しました。

私が着目したのが、「自由性と、必然的法則性との対立関係が、選択の問題だ」ということ。つまり、「自由意志」というワード。

そこで私は考えました。選択をした帆高自身、「僕は選択をしたのだ」という実感があったのでしょうか? (ここで一度間をおいて、ご自身でも考えてみてください…。以下に私の考えを載せております)

私が思うに…。帆高は自身が行動していたとき、「僕は選択をしているのだ」という意識はなかったと思います。「もう一度あの人に、会いたいんだ!」という強い気持ちが、彼を駆り立てていましたから。

しかし、陽菜を連れ帰った後、彼は自分が「選択をした」ことに気付いたのではないでしょうか。「自分が世界を変えてしまったのではないか」。そういう自責の念を、彼は保護監察下の2年半の間、抱えていたわけです。

ところが帆高は、東京を再訪して冨美や須賀の話を聞くうちに、「世界はもともと狂っていた」と思うようになりますよね。

しかし! 帆高の瞳が彼女の姿を捉えたとき、彼は気付きます。「いや、違う! 僕は選んだんだ。青空よりも陽菜さんを。この世界を、ここで生きていくと!」。(うろ覚えですが、たぶん合ってます)

ここまでお読みになって、「オイオイ、シェフさん (いちおう私のことです 笑 )。今のはストーリーをただなぞった(説明)しただけじゃないかい?」と思った方は、おそらくまだ理解が甘いと思います。私は、この発見が、とても重要なものであるように思えるのです。なぜそう感じるのかは、上手く説明できないのですけど…(おそらく、選択の性質を考慮して考えたことに意味があるように思います)。

終わりに

いかがでしたか?

選択について突き詰めていくと究極は哲学的な話題になるので、今回はここでお開きにしましょうか。

どんなに小さなものでも良いので、感想・意見・疑問点のある方はぜひぜひ! コメントをお寄せください!✨

皆さまからのコメントを、お待ちしております!

それではまた~!👋

追記

問題および解答解説を追記します。

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解答解説編

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いかがでしたか?

どんなに小さなものでも良いので、感想・意見・疑問点のある方はぜひぜひ! コメントをお寄せください!✨

皆さまからのコメントを、お待ちしております!