TMの個人ブログ

某文系Q帝大生の個人ブログ。新海作品やその他 諸々について記事を書いています。LAMUさんというお方の新海作品ブログにもお邪魔させて頂いております。

『秒速』の考察の前に ~現代文式考察とは~

さあ、今日から8日間にわたる「秒速ウィーク」の始まりです。4つの記事を2日間隔でお届けいたします。

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第1回は、考察をする上での私の姿勢についてご説明いたします。そう、タイトルにある「現代文式考察」とやらについてです。順を追って説明していきますね。

・映画、小説、漫画…、メディアの性質について

知識:media(発音はミーディア)はmedium (訳は「中間」、発音はミーディアム)の複数形で、媒体、つまり我々と作品を仲介してくれるものです。


『秒速』という作品を媒介してくれるメディアは、以下の4つになります。

・映画『秒速5センチメートル』監督:新海誠
・小説『秒速5センチメートル新海誠氏著
 小説『秒速5センチメートル』one more side 加納新太氏著
・漫画版『秒速5センチメートル清家雪子氏作画

では次に、それぞれの媒体の特徴について解説していきます。

・小説

小説は皆さんもご存知の通り、他の媒体よりもはるかに登場人物の細やかな心情を知ることができます。

・映画の特徴とその弊害

まず主張から申し上げますが、『秒速』を始めに映画から観るのは大変危険な行為なのではないか、と私は思っています。

しかしながら、映画を通して『秒速』の世界に踏み入れるケースが圧倒的に多いでしょう。もちろんこれは仕方がないことではありますが、そうであるが故に、『秒速』への誤った考えを抱いてしまう人が多いのだと思います。ご自身で調べてもらえれば分かりますが、実際『秒速』を批判している方は、映画に対して批判していることがほとんどです。

映画は、登場人物が何か言っても、その言葉(セリフ)が発せられたとき、どのような心情であったかを知ることができません。状況からある程度は推測できますが、それは文字通り、「推測」でしかありません。これはメディアの性質上仕方がないことでしょう。

また映画は、次々と映像が目に飛び込んでくるため、小説に比べると、登場人物の心情をじっくり理解する暇がかなり少ないと思います。ですので、とにかく思い込み(これには、後に小説と照らしてみると誤解としか言えないものも多分に含む)が生じやすいのです。

・漫画

漫画の利点は、映画と小説の両方の要素を含んでいることです。つまり、映画に代表される視覚的イメージを構築しつつ、文字として印刷された言葉から、登場人物の心情を時間をかけて味わうことができます。もしあなたがまだ『秒速』をご覧になっていなければ、漫画版から見ることを強くお勧め致します。漫画版から踏み入れるだけでも、作品への捉え方がずいぶん変わります。私自身『秒速』とは漫画版で出会いました。感想として「切ない」とは思いましたが、貴樹を「かわいそう」と思ったり、この作品をバッドエンドだとは思いませんでした。

・各メディアのまとめ

ですから、映画は視覚的イメージを構築するのにはかなり有効ですが、登場人物の心情を正確に把握・理解するのには適していないと私は思っています。だからこそ新海監督はーー、映画では伝えきれない内容を「補完」するために、自ら小説を執筆されているのでしょう。これは小説『君の名は。』のあとがきにて書かれていましたね。つまり、映画と小説と漫画の全ての媒体を、考察対象にすべきだと私は思うのです。


そうした1つ1つの思い込み・誤解が積み重なって、奇妙な作品観や、「秒速はハッピーエンドかバッドエンドか」という不毛な議論が生じてしまうのだろうと、私は思うのです。

はっきり言って、ハッピーエンド、と言うのには語弊がありますが、秒速はポジティブ(前向き)な姿勢で終わっているのは間違いありません。なぜそう断言できるのかといいますと、小説中にそうとしか受け取れないキーワードが散見されるからです。私と同じ考えの方もいらっしゃって(https://fanz-p.com/828/2)、記事の最後の方にも書いてありますね。

・『秒速』の考察は極めて難しい

『秒速』は、いくつかある新海作品の中で、最も考察が難しい作品だと私は思っています。具体的に言いますと…、1つ受け取り方(取扱い方)を誤ると、その人の人生観を左右しかねない「爆弾💣」のような作品だと僕は感じています。それだけに、厳密かつ丁寧な考察を我々はしなければいけません。

映画、小説、漫画と媒体がありますが、我々はこれから登場人物の心理・行動を考察していくわけなので、それらが最も詳細に描かれている小説を中心に考察を進めていきたいと私は思っています。そして、その小説を読み解いていく方法というのがーー、タイトルにある「現代文式考察」なのです。

・現代文式考察法とは

考察の原点として、『秒速』をまるで現代文の問題の解答を作成するように読み解いていきたいと思います。これを私は「現代文式考察」と名付けたいと思います。すなわち、小説2冊にわたる膨大な量の文章を現代文本文とみなし、本文を厳密に分析して、論理的に言葉を繋ぎ、精密な解答を作成することを目指します。

こうして1つ1つの疑問を解決していくことが、「秒速は我々に何を伝えたかったのか」「貴樹と明里の違いは何だったのか」という、私が考える「究極の2問題」を考察する上で必ず役に立っていくはずだと、私は信じています。

次回はこの現代文式考察法を用いて、さっそく考察に取りかかりたいのですが…。その前に、考察の中心である小説について、その形式と特徴について説明しようと思っています。

・今回のまとめ

1. 映画からではなく漫画から『秒速』の世界に入るのがオススメ

2.『秒速』の考察は新海作品の中で最も難しい

3. TMは現代文式考察法という手法で考察をしていく



以上になります。ご覧いただき、どうもありがとうございました!

それでは、また次回!➰👋😃